帯下異常・性感染症
帯下異常・性感染症

性感染症は、性的接触によって感染する病気の総称です。
「自分には関係ない」と思われがちですが、実際には誰でも感染の可能性があり、自覚症状がないまま気づかずに広がることも多い病気です。
放置すると将来の妊娠や出産に影響したり、パートナーへ感染させてしまうこともあるため、早期発見・治療が大切です。
感染源となる病原体(細菌・ウイルス・原虫など)は、性器周辺、精液、腟分泌液、血液、粘膜などに存在しており、直接的な接触によって体内に侵入します。
代表的な性感染症には、クラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、梅毒、腟トリコモナス症、HIV感染症などが挙げられます。子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスも性的接触を介して感染します。
クラミジアは自覚症状がないことが多く、90%以上が無症状です。したがって気づかないまま感染が広がってしまうことも少なくありません。女性では、おりものの増加、不正出血、下腹部痛、右上腹部痛、性交痛などが出ることがあります。放置すると卵管炎を引き起こし、将来的に不妊や子宮外妊娠の原因になることがあります。感染者の約10%に淋菌感染症を合併しています。
淋菌による感染症は、約50%の女性が無症状です。膿のようなおりものや排尿時の強い痛み、下腹部痛などが見られます。感染力が非常に強く、放置すると卵管炎を起こし、不妊の原因になることがあります。
原虫という小さな寄生生物によって起こる感染症です。泡立った黄緑色のおりものが出て、強いかゆみや悪臭を伴うことがあります。ただし症状が軽く、気づかないまま感染が広がるケースもあります。性行為以外でも感染することがあります。
単純ヘルペスウイルスによる感染症で、外陰部に小さな水ぶくれができ、ただれて強い痛みを伴います。初めて感染したときは症状が重く出ることが多く、発熱や全身のだるさを伴うこともあります。一度感染すると体内に潜伏し、疲れやストレスで再発することがあります。
梅毒は近年増加している性感染症のひとつです。初期には性器にしこりや潰瘍ができますが、痛みがないため気づかないこともあります。進行すると全身に発疹が出たり、放置すると心臓や神経に障害をきたす重症感染症に進展する可能性があります。妊娠中に感染すると胎児に影響を与える恐れもあるため、特に注意が必要です。
HIVは免疫力を低くださせるウイルスで、初期には風邪に似た症状(発熱・のどの痛み・倦怠感など)が出ることがあります。その後は長期間無症状で経過しますが、次第に免疫力が低下し、通常ではかからない感染症や悪性腫瘍を発症するようになります。早期に発見して治療を始めれば、健康な生活を長く続けることが可能です。
上記のような症状に心当たりがある場合、性感染症の可能性も含めて何らかの体調の異常が考えられます。必ずしもすべてが性感染症に特有のものとは限りませんが、自己判断せず、早めに泌尿器科や婦人科などの専門医にご相談ください。
性感染症の診断には、感染が疑われる病原体に応じた検査を行います。尿検査や血液検査、腟分泌物・喉のぬぐい液などを用いたPCR検査・培養検査が主に行われます。クラミジア・淋菌・トリコモナスなどは比較的簡便なおりもの検査や尿検査で確認できます。
HIVや梅毒など一部の性感染症は、感染からある程度時間が経たないと正確に診断できないため、性行為から2〜4週間程度経過した上での検査が望まれます。無症状であっても、定期的なスクリーニング検査が大切です。
性感染症の多くは、適切な診断のもと、抗生物質や抗ウイルス薬によって治療が可能です。クラミジア・淋菌・梅毒・トリコモナスなどの細菌性疾患には、抗生物質の内服または点滴を用います。性器ヘルペスやHIVなどウイルス性疾患に対しては、ウイルスの増殖を抑える薬や免疫機能を保つための薬剤を処方します。
尖圭コンジローマでは、外用薬での治療に加え、焼灼などの外科的処置が行われることもあります。再発やパートナーへの感染を防ぐため、治療中および治療後の生活指導やパートナーの同時検査も重要なポイントとなります。
おりものとは、女性の生殖器から排出される分泌物のことを指します。おりものは、腟内の自浄作用、また妊娠において重要な役割を果たしています。
体調の変化や生理周期・妊娠等によるホルモンバランスの変化、抗生物質の内服などでこの自浄作用が低下すると、大腸菌などの細菌やカンジダが通常以上に増殖してしまい、おりものの増加やにおいの原因になります。
その他にも、性交渉を介して、クラミジア、淋菌、トリコモナスなどの感染症に感染すると、症状が出ないこともありますが、おりものが増加し、異臭や異色、かゆみや痛みが出現することもあります。
悪性疾患が原因の場合もありますので、異常を感じられたら受診をお勧めします。